CAEの使いどころはそもそもどこなのか

はじめに

取り扱う課題が何であれ、『材料物性』と『境界条件』が現実から大きく外れていなければそこそこ妥当性の高い解が得られるはずです。
CAEは実測値と合わないという声はよく聞かれますが、そもそも完全な現象再現はコストが掛かりすぎます。

  • 寸法のバラツキ
  • 材料物性のバラツキ
  • 温度依存性
  • 負荷(荷重)のバラツキ
  • 計測器の測定限界、誤差
  • 計測器を装置に取り付けることが現象に与える影響
  • 数値計算上の近似誤差

などなど、さまざまな要因を踏まえて精度の話をしないといけないはずです。
ザックリ70点くらいの結果で可不可を判断する、くらいの使い方をしていく方が実務上はよろしいかと。

トラブルシューティング

私がこれまで主に受けてきた案件がここになります。
例えば、部品(金型)が割れたので計算によって原因を確認して対策を打ちたい、などです。
実際に現象が起きているので計算が合致しているか(≒正しいか)どうかを判断しやすい反面、実験の計測値と計算値の合致度を必要以上に求められることもあります。
また、結果に対して対策案を検討することもありますが、製造上の都合などは情報がないことも多く、具体的な対策を提案できる立場や権限、責任範囲を持てないと実効性が薄くなることも…。

現象の可視化

計測が困難、あるいは不可能な現象を計算により視覚化して検討すること。
熱解析(特に部品内部の温度)、流体解析、磁場解析などが主に含まれると思います。

測りづらいものであるので実験値との整合をどう保証するか、妥当性評価をどうするかが難題。
実験との比較をするにせよ、目的が曖昧だとよくわからないコンター図だけが出来て取扱いに困るかも。

設計の方針決め

複数の設計案に対して、より優れているのはどれであるかを比較検討する目的。
製品開発の初期段階における粗い検討というか設計計算の一環として運用するもの。
専任者が実施するような高精度のものではなく、設計案のどちらを取るべきかであったり、安全率込みで塑性変形しないことを確認するとか、そういう範囲で適用していくのがよいと考えます。

受託CAEの存在について

受託解析をやってきた身としては、まあ正直に言ってしまうとそれが必要だと理解されているメーカーさんは既に内製で人員と設備を調達出来ていて、私のような零細事業者が入る余地はほぼ無いのだろうとは感じています。

他方、そうでないところではそもそもそんな小難しいものは必要ない、従来の設計基準で十分だ、と思われているのが実情でしょう。

受託解析はあくまで設計開発のお手伝いであって、それ自体が何かを創造するものではありません。
大手ベンダーの受託では手の届かないような小さなところをお手伝いしていけるような仕組み作りを、今考えています。

コキャクとはどこにいるのか。営業とは

あくまで自分の周囲のごくごく狭い話でしかないのだけれど。

ベンダーの人に聞けば受託解析のニーズ自体は多く、案件や問合せは数多いという。一方で、じゃあそこに営業を掛けるルートはは果たしてどうかというと、これがあまり見えない。

まあGoogleやYahoo!で検索して出てきた得体の知れない会社(しかも個人でやっている)に問合せをしようという向きはなかなかないだろうし。自社の困りごとをインターネットに書いて出来る人募集なんてしてるところも製造業では少ないと思う。これがIT・Webサービス系だとフリーランスで色々動く話は聞くのだけれども。

やってることが必要なところに伝えられない、伝わらないという時点で、今の自分の立場というのは最初から厳しいというのは分かっていたつもりではいたのだけれど。打つ手が見えない閉塞感は如何ともしがたいところ。五里霧中

情報の出し方というもの

モノは言い方でカドが立つ、とは古くからの言葉。

この場合、言い方とは何も語調や語彙だけではなく、それを発するタイミングというのも含まれるように思います。

同じ内容であっても、適切では無い場面というのはあるもの。それを外してしまうとやはり受け手の心証はよくないのではないでしょうか。

広告、告知、そうした色々の場面において、いい意味で人の心を動かすということに気を付けていきたいなと思う事象が(事業とは特に関係無いところで)あったので、ふとそんなことを残してみたり。

解析の精度とは何か

FEMに限った話ではないけれど、計算というものは基本的にもっとも精度の粗い部分で結果の精度が決まるものです。(有効数字の考え方)

こうしたボトルネックは意外と見落としがちで、計算要素(メッシュ)を必要以上に細かくしたり、計算ステップ数を多くしても必ずしも実際の現象に合致する高精度な計算結果が得られるわけではない、ということを非専門家に理解して貰うことの困難さにも繋がっていきます。
(※ 計算の収束性のために一定以上の詳細化は必要なのは前提として)

材料特性や境界条件を現実の問題と100%合致させることは出来ないですし、そもそも形状や寸法であってもバラツキは絶対に生じるものです。

また、実験値との比較においても、実験装置や条件の誤差、計測器の誤差や測定限界が当然あるわけで、そうしたさまざまの条件を抜きにして実験と計算が合う合わないと議論しても仕方がないのです。

モノ作りにおける解析で重要なのは、厳密解に近づくことではなく、製品の設計開発において方針を定めるに足るデータとしてどの程度のモノが必要なのかを規定しておくこと。正解の無い問題ですが。

オーバースペックな仕事にならないための経験を積み重ねていきたいものです。

CAEはどう使われていくのか

FEMに代表されるCAEツールというのは汎用、特定目的問わず数多くあるわけですが、極端なことを言ってしまえば超高級関数電卓のようなものです。

操作の複雑さというのは相応にあるにせよ、あくまで道具。道具が使えることそれ自体は特別ではない(と考えます)。

シミュレーションでもっとも難しいのは条件設定。私が主としてきた機械系CAEで言うと材料物性と境界条件です。

道具の使い方というのはベンダーのセミナーや学校で教わることが出来ます。参考書を買って独学でもなんとかなるでしょう。私もANSYSの使い方をほぼ独学に近い形で覚えました。(旧会社でMultiphysicsライセンスを利用していました)

一方、境界条件を決めるためには機械系の基礎的な素養を学んでいる必要があると考えます。セミナーでは実際の現象に対応した値は出しようが無いからです。製品の仕様、環境に正解はありません。

また、数値シミュレーションは実物による実験と異なり、さまざまな条件を操作者が自分の手で決めることが出来ます。目標とする数値を導くために、現実とは異なる条件、あるいは起きえない条件を設定しても、大抵の場合”与えた条件通りに正しい答え”が計算出来てしまいます。発散して解が得られないこともありますが。

そして、与えた条件が正しいのか、出てきた結果は物理現象として適正であるかどうか、これを解析技術者は判断しなくてはいけません。これが難しい。実物を使った実験であれば、物理的に正しいかどうかは議論の余地が無いですが、計算の場合はそうもいきません。解析(CAE)は信用出来ないと未だに言われ続けるのもこのあたりが適切に認識されていなかったりするのでしょう。

昨今はAI技術の発達もあり、こうした設計検証自体は全て機械任せになる未来が、あるいは来るのかも知れません。

ただ、どれほど計算技術が発達しても、計算機はあくまで与えられた条件と数式から解を提示するだけ。数式は偉大な先達が研究を重ねて導き出されたモノですが、間違った条件を与えれば”間違いの通りに正しい答え”が出てしまう。

その妥当性の判断を人間が行わなければならない限り、CAEというものが技術者の手を離れることはないのではないかなと、そのように思います。

近況のお話

会社Webサイトの更新が長期に停滞しており、果たして事業をやっているのかいないのか解らないというのもよくないなということで、雑記ではありますが不定期に書き物をしていこうと考える所存。

そもそもの状況としては、役員借入金を負債として残したくないという事情から新規に会社を設立して父の会社(有限会社スコーレ・ティー・エー・リサーチ)から事業承継(ということになるのかな?)をしたのが3年前のこと。
その時点の計画では、父がそれまでに経験してきた知見を技術情報紙として営業資料にしつつ、仕事を続けていくつもりでした。
(サイトにSTepの名称で現在1号のみ掲示してあるものがそれです)
ただ、弊社を設立してスコーレの清算をしている途中に父が急逝、色々と整理が付かないままズルズルとサイトが放置状態になっておりました。
技術情報の形で掲出できるものがなかなかないため、まとめて書ける内容を思い付いたら第2号以降を作りたいと思ってはいますが、こちらに関しては引き続き更新未定(凍結)状態とします。
父がやっていた当時は名刺交換をさせて頂いた方とご縁を繋ぐ&営業活動としてメールで配信していたのですが、そのスタイルで再開するかどうかも未定です。

仕事自体は、父と一緒に仕事をしていた頃にお世話になった方々から不定期にお声掛けを戴いて、ギリギリアウトにならない程度で辛うじて今までやってきております。
そもそもが自社製品を持つわけでも無く、「こんな部品の計算評価がやりたい」とのお話を具体的な計算条件に整理して回答を提示するというようなスタイルが多かったもので、自分の側からこんなことが出来ますと営業に打って出ることができません。
基本的にお客様の開発案件のお手伝いとしてのCAE受託(個人でやっているため客先常駐はしておりません)が中心であり、取り扱っている内容が先方の機密にあたることが多いため、実績として記載可能な事例が無く、一体何が出来るのかが解りづらいなとは常に感じております。

先の見通せない状況ではありますが、出来る事を少しずつ進めていければと。

1 2